日本森林ボランティア協会は1997年の設立以来、森林ボランティア活動とリーダー養成、森林体験プログラムの実施などを続けてきました。18年たち会員は300人近く。週末はいつもどこかで活動がある。事故も少しずつ増えています。
協会がお手伝いするボランティア養成講座、体験プログラムも増えました。協会の活動を安全に続けることはもちろん、安全意識の高い指導スタッフ養成も急務です。
こうした点を踏まえ安全講習の実施、作業の手引き作成など独自の工夫をしてきましたが、さらに一歩進めるため昨年、従来の安全委員会を安全対策委員会として再編、久保英男理事を委員長に選びました。(1)日常活動の安全対策(2)安全講習会と安全意識の徹底(3)事故対処法の整理(4)体験的教訓集としてヒヤリハットの収集・整理−の4項目を重要テーマと考え、議論を進めています。
動き出した安全対策委員会。機関紙の春号で久保委員長が紹介したけれど、まだまだ知られていない部分が多いと思います。現在の活動、今後の計画などを説明します。
テーマごとに説明します。
(1)日常活動の安全対策
これまで協会の活動で意識した安全対策は@作業当日の安全確認担当者を置くA2〜3人程度のグループで作業する―などでした。少しだけ仕掛けを加え「危険なやり方、無理な作業はやめよう」という呼びかけを、参加者全員が正しく認識できるようにしたいという声がありました。活動地世話人の皆さんも交えた議論をまとめ、お願いしたのが次の4点です。
@当日の安全確認担当者は必ず置く。担当者の注意、指導を活動参加者が聞く雰囲気づくりをする。
Aグループの編成に気を配り、危険な仲良しグループを作らない。
B活動地ごとに安全確認の日を設ける。
C毎月の活動報告にヒヤリハットなどを加える。協会のメーリングリスト(ML)で流し、注意喚起する。
Bは少し説明が必要かもしれません。全活動地で安全意識のレベルを上げるため、年に1度は日を決めて安全なやり方・考え方を確認したらどうだろうという発想です。協会で安全月間を作るという考えも出ましたが、とりあえず活動地ごとに日を決めてやってみようということで話を進めています。その日に対策委メンバーも参加し、基礎的な安全講習を開くなど、お手伝いをすることも検討しています。
こんな形で安全講習の在り方、見直しの議論も重ねてきました。
(2)安全講習
安全講習は数年前から伐木技術、ロープワークなどと救急法を組み合わせた1泊講習を年に1回程度実施。活動地リーダーを中心に参加を呼びかけてきましたが、さらにステップアップできる講習内容にしたいと考えました。
まだ議論の途中ですが、まとまりつつある形は、次の通りです。
@伐木技術や確かめる「基本コース」、危険予測力を上げる「習熟コース」の2段階にする。別に救急法の講習を行う。
A基本コースは、活動地ごとに「安全確認の日」などで年1回は実施する。可能なら救急法の実習を合わせた1泊講習を協会で年1回程度実施する。昨年改訂した「森づくりの手引き」を使い、作業手順の確認を眼目とする。
B基本の作業手順を理解した会員対象に「習熟コース」の講習を2年に1回程度実施する。伐木作業の手順を分解・再構成するワークショップなどで、危険予測の力を磨く。
習熟コースは今年3月、試験的に実施しました。スタッフも不慣れで、反省点は多いけれど「作業に伴う危険と、必要な対策を考えるには効果がある。間を置かずもう一度やってみたい」という声が強く、年内にもう一度やることにしました。
救急法実習は別にするなどプログラムも見直し10月31日〜11月1日実施の予定です。今後は活動地リーダー、体験プログラム指導者などは「習熟コース」修了者を中心にすることも考えており、10月講習から修了証を発行できないか検討しています。
別プログラムとする救急法実習は箕面国有林、金剛山の定例活動日に現場講習を実施する方向で調整。今年は12月の活動日を予定しています。また森林大学の救急法講座を、修了生の方が再受講し、知識の確認に役立ててもらうよう呼びかけたいと考えています。今年は7月26日です。参加を希望する方は、協会へ申し込んでください。
(3)事故対処法の整理
事故が起きてしまったらどうするか。行動の指針として、次の3点を確認しました。
@会員に速報し注意喚起。なるべく早く詳細な経緯、事故原因などを調査し、再発防止策とともに報告を公開する。
Aこうした対応ができるよう手順マニュアルと報告の書式を整理、会員に周知する。
B事故報告、ヒヤリハットを教訓として生かすため、データベースを作成、閲覧できるようにする。
少し説明します。
▽事故対応の手順
当たり前ですが、事故が起きたら負傷者の救助・手当てが最優先です。余裕ができたら当事者や周囲の人から事情を聴き、状況を確認する。可能なら写真を撮り、見取り図などを作成。重大事故と考えたら、状況を協会へ連絡、事務局長がMLなどで会員へ情報提供し、注意喚起する―ここまでが事故直後に必要な対応だと考えています。緊急連絡の対応は事務局長で一本化することを確認しました。
活動地リーダーを中心に参加者が分担し、負傷者の手当てや状況確認に当たることが必要になります。参加者があわてず対応できるよう手順を簡潔なマニュアルにしてみました。この報告書の末尾に付けます。会員証に付けるなどの方法もなるべく早く検討しようと思います。
再発防止を考えるなら、さらに詳しい状況確認が必要になります。活動地リーダーを中心に事故報告書を作成してもらうことにしました。報告書を基に事故原因を考え、再発防止策を加えた最終報告書を公表します。
かなり面倒な感じですが、「しっかり事故対応し、再発防止の対策ができることを示すためにも報告書の公表までの手順が必要」というのが安全対策委の結論です。
公表は1カ月以内をめどとし、協会ホームページ(HP)などを利用する方向で検討しています。
事故は起こしたくないが、そのために何をすべきかは実際に起きた事故を研究すれば理解できます。事故やヒヤリハットを教訓として生かすため、ポイントをデータベースとして整理、少なくとも会員は随時閲覧できるようにしたいと準備しています。林業災害防止協会がHPで公開する災害事例研究のようなイメージです。
ただし協会HPの活動報告で毎回ヒヤリハットがあるのは、さすがにどうかと思うので、方法を研究中です。
<資料1>事故対応の行動マニュアル
「事故だ!どうする」行動マニュアル
1.まず負傷者救助。必要ならすぐ119番。
2.冷静に状況確認、すみやかに協会へ連絡。
3.参加者で発生状況を詳しく調べ、記録を。
日本森林ボランティア協会 06-6376-8255 |